真夜中プラトニック
 朔夜さんの顔を覗き込むと、赤い顔をして目を閉じていた。寝てる……?


「いやぁ、ここまで運ぶの苦労しました。すみませんが陽咲さん、ベッドまで連れていくので手伝ってもらえますか?」
「はい!」


 アワアワと若干もたつきつつ、先導して朔夜さんの寝室のドアを開けた。

 田宮さんは「ちゃんと歩いてくれないといい加減蹴りますよ」とか悪態をつきながら進み、私も手助けして長身の朔夜さんをなんとかベッドへ転がすことに成功した。

 ほとんど足を踏み入れたことのない、朔夜さんの寝室。ドキドキするけど、そんな場合ではないと気を引き締める。


「ふー。では、専務を無事送り届けたので僕はもう帰ります。酔っ払いを陽咲さんに押しつけるようで気が引けますが……」
「いえ……あの、コーヒーとか、飲んでいかれますか?」


 とりあえず朔夜さんは具合が悪いわけではなさそうなので、田宮さんにそう声をかけてみる。

 田宮さんは、さわやかに笑って答えた。


「せっかくのお誘いですが、今夜は遠慮させてください。あなたとふたりきりでいたことが後々専務に知られると、僕の命が危ないので」
「いのちが……?」


 さらりと飛び出たセリフが予想外すぎて、一瞬思考が宇宙に飛んだ。どうして、田宮さんの命に危機が……?
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