真夜中プラトニック
「父さんも……酒には弱いだろ……」
「そうですね。取引相手がいる前では絶対に酔った素振りは見せませんが、相手と別れた瞬間千鳥足になったり吐きそうになったりしてました」


 第三者から聞く父親の情けない話ほど反応に困るものはない。
 俺自身今かなり頭がふわふわしているので、余計に上手い返しが思いつかなかった。


「おまえもよくやるよ……親子二代のお守りして……」
「社長にはお世話になったので、そのご子息であるあなたのお役にも立ちたいだけですよ」
「胡散臭い……」
「ひどいな」


 笑って、田宮はブザーで店員を呼び出す。

 やって来た店員に新しい酒と料理をいくつか頼み、俺にも注文がないか促してきた。少し考え、テキーラを頼む。


「正気ですか?」
「強い酒が必要だと言ったのはおまえだろ」


 答えて、目の前にあっただし巻き卵を箸でつまむ。

 美味い。けど、陽咲の作った卵焼きの方が美味い。


「全部口に出てるんですよ。そういえば、ちゃんと陽咲さんには連絡しました?」
「した……文字のやり取りだけでも陽咲はかわいい……」
「べろべろに酔っ払った上司がおもしろすぎる」
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