孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい

1 〝人殺し〟との再会

杏依(あい)先生!」

 海辺の少し高級な、おしゃれなレストラン。檜垣(ひがき)杏依(あい)が店内へ入ると、元同僚の須藤(すどう)明美(あけみ)が軽く手を挙げた。

「杏依先生は、ここね」

 なぜか気合の入ったメイク姿の明美の隣を指定され、杏依は首を傾げた。

「これってピアノ講師時代のみんなとの、食事会だよね?」

 席順がおかしい。なぜ、四対四で向かい合う形になっているのか。目の前の空席には、誰が座るのだろう。

「ゴメン、これ合コン」

「やっぱり」

 杏依はため息を零した。せっかく、三年前まで同じ教室で講師をしていた、彼女たちとの時間を過ごせると思っていたのに。 

「でもね、今日はメンツすごいから! なんてったって、お相手はお医者さまだよ、久我(くが)総合病院の。杏依先生にとっても、いい話だと思うんだけど」

「久我、総合病院……?」

 その響きに、杏依の心臓はドクドクと(いや)な音を立て始めた。
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