孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい

2 『離別』のエチュード

 目が覚めると、見知らぬベッドの上にいた。

 目に入ったのは天井をかけるアールの間接照明、続いて天井まで続く大きな窓と、そこにつけられた重厚なカーテン。
 そのカーテンタッセルすら煌びやかで、高価なものに違いないと思った。

 窓の外は明るい。どうやら、一晩ここで寝てしまったらしい。
 杏依は昨夜の記憶を必死に手繰り寄せた。

 白哉に腕を引かれ、店を出て、タクシーに乗せられた。家の住所を聞かれたような気がするが、腕の痛さが酷すぎて何も答えられなかった。

 そこから先の記憶が全く無いから、きっと痛みで気を失ってしまったのだろう。
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