孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「遅くなっちゃってごめんね、須藤さん」

 正面からやってきたのは、何やらオーラを放つ四人組。口を開いたのは、キラキラとした笑顔をこちらに向ける、三十代前半くらいの優しそうな男性だ。

王子(おうじ)先生!」

 明美が立ち上がり、目をハートにする。

「あ、王子っていうのは名字だからね! 俺、王子(おうじ)碧人(あおと)って名前だからね!」

 笑いが起こったけれど、杏依の目はその彼の背後にいた男性に釘付けだった。

 碧人に腕を掴まれながら、怜悧な顔を不服そうに歪ませ店内を見回す人物。
 じっと見ていると、彼もこちらを向いた。目が合う。

「あ」

 驚いた顔が見えたのは一瞬だった。杏依が、顔をそらせてしまったから。

 なんで、こんな所で会わなきゃいけないの!?

 最悪の再会に、杏依の鼓動はいっそう激しくなる。

 彼は久我上(くがじょう)白哉(びゃくや)。――杏依の右腕を切った、〝人殺し〟と呼ばれる天才整形外科医だ。
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