孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 家の前に着くと、父と母が玄関から出てきた。杏依は実家暮らしなのだ。両親は怪訝な視線をこちらに向けて、そこに立っている。

「そうだ、これ」

 白哉が何かを渡そうとしてきたので、杏依は反射的に手を出してしまった。

 ころんと手の平に乗ったのは、先ほど投げられキャッチしてしまった、白哉の家の鍵だった。ピアノの上に、置いてきたはずなのに。

「いつでも弾きに来て構わない」

「いや、でも――」

 慌てて返そうとしたのに、白哉は手を引っ込めた。

「持っててくれていい。別にあの家に取られて困るもんもねーし。俺しか住んでねーし、っつーか俺もほぼ病院にいるから」

 白哉が言い終わる頃には、両親が車の前まで来ていた。

「杏依!」

 母の声が聞こえた。高級車に乗せられ帰ってきた娘を、二人はどう思うのだろう。
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