孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 白哉は先に車を降り、両親に一礼した。

「ご無沙汰しております」

「あなた、久我総合病院の――」

 両親が目を見開いたから、杏依も慌てて車を降りた。

「杏依さんの手術を担当しました、久我上白哉です」

「お前、まさか娘に――」

 父の眉がつり上がった。無理もない、杏依の目は泣きすぎて、赤く腫れあがっている。

「お父さん、違うの! 助けてもらっただけたから」

「……そうか」

 『だけ』と言うのは少し違うが、杏依は嫌なことをされたわけじゃない。
 白哉はもう一度一礼すると、車に戻り走り去ってしまった。

 あ、返しそびれちゃった……。

 杏依の手の中には、白哉の家の鍵が握られたままだった。
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