孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい

4 孤独な天才整形外科医

 翌日は元より予定があったし、仕事帰りでは遅くなるからと一週間が経ってしまった。

 日差しの降り注ぐ蝉時雨の中、杏依は久我上と書かれた表札横のインターフォンを鳴らした。けれど、反応はない。

 二度ほど押してから、家にはほとんどいないと白哉が言っていたことを思い出す。杏依は登ってきた坂道を下り、久我総合病院へと向かった。

 久我総合病院は地域で一番大きな基幹病院だ。診察なら総合受付に保険証を出すが、今日は白哉にお礼を言いに来ただけだ。
 事故以来三ヶ月に一度はここに通っている杏依だが、インフォメーションカウンターへ向かうのは、何だか変な心地がした。

「すみません」

 声を掛けると、カウンターにいた若い女性はにこやかに微笑んだ。

「久我上白哉先生に、お会いしたいのですが」

 受付の女性は分かりやすくぎょっとした。けれど、それは一瞬で。

「久我上白哉は手術中でございます。何かご用件がこざいましたら、お取次ぎいたしますので――」

「あ、白哉の彼女!」

 突然聞こえた声に、ぎょっとして振り返った。白衣を翻し爽やかに笑う彼は、合コンの時に白哉の腕を引いていた碧人だった。
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