孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 翌日、杏依を待ち受けていたのは、右腕の洗浄という壮絶な治療だった。
 トラックのタイヤに巻き込まれた杏依の右腕は、油や砂利が身体の内部まで入り込んでいたらしい。その除去作業があるというのだ。

 やってきた看護師に丁寧に包帯を剥がされると、突然器具を突っ込まれた。腕の肉の内部をえぐるように、ぐりぐりと器具を動かされる。

「痛い! もう無理です!」

「無理と言われても、やらないわけにはいかないんです。細菌感染は怖いですからね」

 その間にも、腕の中を引っ掻き回されているような、壮絶な痛みに涙と叫び声を上げた。
 逃げようと腰を曲げたら、看護師にぐいっと押さえつけられた。

 これ、いつまで続くの!?

 ひたすら泣いて、泣いて、泣いて我慢した。けれども我慢できず、痛みに叫ぶ。

 毎日、恐怖で眠れなかった。事故から生還した喜びなど、どこかに去って行ってしまった。

 そんな治療が続いた、五日目のこと。母との面会中に、彼は突然やってきた。
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