孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 先日、この場所で唐突にキスをされ抱きしめられたことを思い出し、杏依は思わず半歩身を引いた。
 気恥ずかしくて俯くと、頭上からふふっと笑う声が聞こえた。

「可愛いな、お前」

「へ?」

「耳まで真っ赤」

「あ、いや、あの!」

 言い返そうと見上げると、思っていたよりも何十倍も近くに、あの優しい顔がある。

 勝手に胸が高鳴って、視界が潤んだ。
 彼の手が伸びてくる。身体を強張らせると、彼の手は杏依の頭に乗った。

「お疲れ様」

「あ、お疲れ様、です……」

「腹、減らないか?」

「へ?」

「飯、食い行こーぜ」
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