孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 入り口で白哉は二、三言何かを店員と交わす。すると店員に案内されたのは、奥にある個室だった。

 二人掛けのテーブルはL字に椅子が配置されていて、夏の夜の海が良く見える。店員が手前の椅子を引いて、私に座るように促した。

「お酒は飲めるか?」

「少しなら」

「彼女には料理に合わせた赤を。俺は炭酸水で」

 白哉は料理を注文すると、さっそく目の前にカトラリーが並べられる。けれど、それは全て左側だけだ。

 あれ、と思う間にも、ドリンクがグラスに注がれる。白哉が掲げたから、杏依も慌ててワイングラスを掲げた。

「どうした?」

 動揺が伝わってしまったらしい。杏依は「いえ」と乾杯をした。
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