孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「仕事はどうしてるんだ?」

 不意に白哉が口を開いた。

「ピアノ講師だったんだろ? 今は――」

「同じ会社の、本社の事務員をしてます。あ、でも今は、チェロにも挑戦してます」

「チェロ?」

 白哉がこちらを向いた。

「はい。義手で弓を持って、肩甲骨を動かしてボーイングするんです。音程を決めるのは左手だから、片腕でもできるかなって」

 言いながらチェロを弾く真似をした。けれど、途中で恥ずかしくなってしまい、最後は照れ笑いが混じってしまった。

 白哉は杏依の話に一度目を見開く。けれどすぐに目を優しく細めて、杏依の頭に大きな手を置いた。

「……すごいな」

「そんなこと、ないです」

 コーヒーカップで照れた顔を隠すように俯くと、彼の手が杏依の髪を滑る。その手つきが、くすぐったい。
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