孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 ◆◆◆

 白哉は花束を片手に、演奏会の会場へやってきた。
 ピンク色の花ばかりになってしまったこの花の束ほど、自分に似合わないものはないと思う。

 けれど、自分用に買ったわけではない。花言葉を調べ、「希望」とか「感謝」を入れようと思ったら、ピンク色の花束が出来上がってしまったのだ。

 それでも、くどくなりすぎないようにとカスミ草などをあしらい、バランス良く仕上げてくれた花屋の店員は流石だと思う。結果的に、杏依の印象にぴったりの花束が出来上がった。

 オペ予定は変わってもらった。どういう風の吹き回しかと、周りに怪しまれたが関係ない。
 碧人に至っては「貸し二つ目〜」となぜか楽しそうにしていた。アイツの言動には腹が立つが、それ以上に、杏依の晴れ舞台を見たい。

 あの日、白哉は判断を誤った。彼女の腕を切ることを、躊躇してしまったのだ。その結果、ピアノ講師という仕事を断つ決断を、彼女にさせなければならなくなかった。

 それでもなお前を向き、別のことに挑戦し続ける彼女は、白哉にとって希望の光だ。
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