孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「なんでここにいるのよ!? ああ、縁起でもない!」

 彼女の張り上げた声がロビー中に響いて、来場者の視線全部がこちらを向いた。彼女は娘のピアノの発表会に来ていたのだ。

 白哉は深く頭を下げた。あの時、彼女のお腹にいた小さな命は、今はもう五歳。
 こんなに大きくなったのか、あれから彼女はひとりきりで子供を育ててきたのか、と、複雑な気持ちになりながら。

「こんなところで会うなんて、最悪よ! 娘の初めての晴れ舞台だったのに!」

「申し訳ございません」

 白哉は丁寧な言葉で、深く深く頭を下げる。
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