孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 周りの視線を感じながら、彼女と娘の脚が出口の外へ出ていったのを見届け、白哉はそっと頭を上げた。

 自分は、人殺し。
 その事実は、どんなに時が経とうとも変わらない。

 持っていた花束がくしゃりと音を立て、見れば、いくつかの花はつぶれてしまっていた。気づかぬ間に、強く握り締めてしまったらしい。

 自分はここにいるべきではない。まだロビーの人々の視線が自分に刺さっているのを感じ、白哉は受付に向かった。

「ご迷惑をおかけしました。これ、彼女に渡しておいて頂けますか?」

 白哉は崩れてしまった花束を明美に渡すと、杏依の演奏を聞かずに出口へと足早に向かった。
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