孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 ◇◇◇

 無事に二部が終わり、杏依は胸をなでおろした。
 段帳が降りたのを見届けてロビーへ急ぐと、早速、三年前までの教え子たちが周りに集まってきた。

「杏依先生、チェロすごかった!」

 懐かしく、けれど大きく成長した子供たちの顔を見て、杏依の顔は綻んだ。

「みんなも演奏すごかったよ! お疲れ様」

「私ね、杏依先生の演奏聞いて感動しちゃった。杏依先生は、腕が無くてもなんでもできるんだね!」

 そう思ってくれたことが嬉しい。
 ピアノができなくなっても、音楽を楽しむことができるのだと伝えられたのなら今日の演奏は大成功だ。
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