孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
『とにかく、海原楽器さんがもしどこかであの人と繋がっているのであれば、娘もピアノ教室に通わせるのを辞めようと思っておりますの。人殺しと繋がっている会社だなんて、考えただけでも吐き気がするわ』

 ため息まじりの声に、杏依は早く電話が切りたくて仕方がない。

『あの人を海原楽器と関わらせないで欲しいんです。調査してくれません?』

 そんな、身勝手な!

「社内に報告いたしますので、お時間いただけますでしょうか?」

 出かけた言葉を飲み込んで、杏依はいたって冷静に返答をした。

 受話器を置き、苛立ちを抑え込むようにため息を零した。

 電話をされてしまった以上は報告しなければならない。聞き取ったことを紙にまとめ、取り急ぎ要件だけをクレーム受付の部署に連絡した。
 それから、きちんと報告書にまとめようとパソコンに向き合った。
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