孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「それでは、失礼いたします」

 しばらくして受付に戻ってきた白哉は、受付にいた杏依に頭を下げた。

 今の二人は被害会社と加害者の関係。頭ではそう分かっているが、ビジネスライクな挨拶に、杏依の心はチクリと痛んだ。

 背を向け、自動ドアを通過し、白哉が出て行く。

「あの!」

 杏依は思わず受付を飛び出した。彼の背中に向かって声を上げる。
 すると、白哉は困ったような笑みをこちらに向けた。それから、視線だけで隣のカフェをちらりと見た。

「檜垣さん、どうしたの?」

『待ってる』

 彼の唇がそう動いた気がしたけれど、後ろから呼ばれた名前に杏依は本社内に戻らざるを得なくなってしまった。
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