孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 仕事を終え、本社を出る。ガラス張りのカフェの店内を覗いたけれど、白哉はいない。

 ため息を零しながら駅までの道を歩いていると、見たことのある高級車が路肩に停まっていて、杏依は慌てて走った。
 ガードレールに凭れていた白哉が、こちらに手を挙げた。

「お疲れ」

「お疲れ様、です」

「カフェで待ってようと思ったんだが、こっちの方が話しやすいから」

 白哉が車を指さす。何かを話そうとしているのだと悟り、杏依は「ありがとうございます」と会釈した。

「ん。乗って」

 助手席を開けられ、杏依はドクドクと鼓動が早まるのを感じながら、車に乗り込んだ。
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