孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 運転席に乗り込んだ白哉は、ステアリングを握ると車をゆっくりと発車させながら、口を開いた。

「演奏会のこと。お前の会社を巻き込んじまって、悪かった」

「いえ、今日はそのお詫びにいらしてたんですよね。私はその現場にはいませんでしたし、むしろ何も知らずに白哉先生を演奏会に誘ってしまった私が悪いので」

「いや、お前は悪くないだろ。演奏会に行くって決めたのは俺だ。それに――まさか、会うとは思ってなかったんだ。あの人に」

 『あの人』とは、大熊氏の奥さんのことだろう。白哉を『人殺し』と罵った、彼女だ。

「お前に、話しておきたいことがある」

「はい」

 平静を装って答えたが、杏依の心臓は早まり続ける。

「俺な、元々〝死神〟って呼ばれてたんだ」

「は?」

 振り向くと、白哉は自嘲するような笑みを浮かべていた。
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