孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「でも、安心しました。白哉先生は、大熊さんを殺したわけじゃない。だって、すごいお医者さんなんですから!」

「いや――大熊肇を殺したのは、俺だ」

 車が赤信号に差し掛かり、止まった。白哉はステアリングを握る手に力を込める。

 白哉は一度、顔を伏せた。けれどすぐに、前に向き直る。その顔が歪んでいて、杏依ごくりと唾を飲んだ。

「大熊肇は、助かったんだ。助かったけれど――……腕を失ったショックで、院内自殺したんだ」

「え……」

 伏し目がちに呟かれた言葉。青に変わった信号に照らされたその顔は、何を思っているのか分からない無表情。
 青白く見えるのは、信号の色のせいだけだろうか。
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