孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 不意に白哉のスマホが鳴る。ため息を零した彼は、ポケットのスマホを取り出した。

「オンコールですか?」

「いや、王子からだ」

 白哉はスマホを確認し、鳴りやまないバイブレーションに再びため息を零した。

「もしもし」

「……先、玄関に向かってますね」

 近くにいては、会話を盗み聞きしてしまうよう。それはなんとなく悪い事な気がして、杏依は車を降りた。
 鞄から白哉の家の鍵を取り出し、彼の前に掲げた。

『悪い』

 会話の途中に口パクで伝えられる。杏依はコクリと頷くと、一人ガレージから玄関へと向かった。
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