孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
「ああ、わかったわ! あなたも仲間なのね。そうよね、〝人殺し(あの人)〟は憎いわよね。私の主人は、あの人に殺され――」

「白哉先生は、人殺しなんかじゃない……」

 『仲間』と言われ、杏依の中に怒りが芽生えた。
 白哉はそんな人じゃない。自らを犠牲にして執刀し続ける、優しすぎるお医者さんだ。

 小声だったが、出した声は震えていた。思わず左拳を握り締め、目の前の彼女を睨む。

 彼女は杏依の顔を見て、黙ってしまった。杏依は耐えられず、叫んだ。

「白哉先生は人殺しなんかじゃありません! 私は彼に助けられました。ピアノは辞めなきゃいけなくなったけど、命を助けてくれたのは間違いなく彼で――」

 すると、彼女は心底恨めしそうな顔でこちらを睨んだ。

「腕がないからってチヤホヤされて、うまく行ったんだからあなたは良いわよね。私は主人が亡くなってから、どれだけ一人で大変な目にあってきたか。私の苦労も、あなたみたいな成功者には分からないわよね!」

 彼女がこちらに走ってくる。その腕が動いた。
 右手に握られていた何かが、玄関の明かりに照らされてギラリと輝く。
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