孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 あの日からずっと恨んでいる〝人殺し〟が、三年ぶりに目の前に現れた。
 きっと今も、あの時のように、睨むような鋭い視線をこちらに向けているに違いない。

 杏依の呼吸は早くなった。だから、深呼吸を意識した。大丈夫だと、自分に言い聞かせる。けれど。

「んん……っ!」

 今度は急激な右腕の痛みに襲われた。あるはずのない、右腕の痛みに。

 なんで!? ちゃんと薬も飲んでいるのに!

「杏依先生? どうしたの大丈夫?」

「だい、じょうぶ……」

 明美の問いかけに答え、無理やりに頬を吊り上げた。けれど、杏依の額には冷や汗が浮かんだ。

 皮膚を引き裂かれるような激痛。思わず右腕を掴みそうになり、左手は(くう)を掴んだ。
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