孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 長い長い口づけの後。そっと目を開くと、思った通り優しい笑みを浮かべる白哉がいた。

「これ以上止まれなくなるとヤバイから、な」

「あ……」

 白哉の左腕の包帯が目に入り、杏依は「ごめんなさい」と顔を伏せた。
 もしかしたらこのまま、なんて思ってしまった。傷口が開いてしまったら、それこそ事だ。

「そんな顔すんなよ」

 大好きな大きな手が頭に乗り、杏依は肩をすくめた。

「これから先、しばらく仕事休まなきゃならねーみたいだし。お前の監視付きらしいし?」

「そうだ! 白哉さんが無理しないように、頑張らないと!」

 思わず左拳を握り、胸の前で振ってみせる。

「真に受けてんのかよ、くくっ」

 白哉は堪えきれずに、ケラケラと笑い出した。

「え、あれ、冗談だったんですか!?」

「いや……、側にいてくれんなら、何でもいい」

 白夜はそう言うと、もう一度杏依の唇に優しいキスを落とした。
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