孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい
 あれから一ヶ月。
 すっかり傷口の塞がった白哉は、明日から仕事に復帰する。そうしたら、またしばらく会えなくなってしまうかもしれない。

 久しぶりに『別れの曲』を二人で弾いた。曲が終わると、白哉は呟くように零した。

「休暇ともお別れか」

「そうですね」

「寂しいか?」

 白哉のからかうような声。けれど、その顔は優しい笑顔。

「はい。でも――」

 『別れ』は、決して後ろ向きなものじゃない。杏依には、右腕と別れたことで、手に入れたものがある。
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