両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!
誰もいない屋上で
「よかった。誰もいない」
四月はまだ風が冷たいから屋上には人が少ない。
騒がしい教室を離れてひっそりと屋上でお弁当を食べる。一年生の頃もたびたび来ていた。
風がとても気持ちよくて、オーバーヒートしそうな頭を一瞬で冷やしてくれた。
天音くんのことをいつまでも考えるのはやめやめ! どうせ私なんかとは住む世界が違う人だし。
さっそくお弁当をパクついていると、誰かが屋上にあがってくる音がして。
「よぉ、ここにいたんだ」
え、待って──。
胸が高鳴る。振り向くと……声の主はやっぱり天音くんだった。
「あ、天音くん!? どうしてここに! いるんですか……」
「教室から出てくのが見えたから探した。そしたら屋上であってた。俺のカンすごくね?」
「──!!」
「悠乃に対する思いがそれだけ強いってことだよなー」
それは……どういうこと……?
「でもさ、悠乃も俺のことひとめでわかったってことは、俺への思い強めってことでいいの?」
私のことからかいに来たのかな?
「そ、それは……なんとなくですけど」
「そお? かなり似てるけどね。俺と奏空。センコーたちもよく間違えるし」
たしかに、どうしてだろう。自分でもわからないけど天音くんだってすぐにわかった。
「あの、他の人にお昼誘われたんじゃないんですか?」
「あ? あー、なんか知らん女子たちに誘われたけど無視してきた」
ひ、ひどい……。ショックだろうな、さっきの子たち。
じっと、私を見下ろす天音くん。間近で見るとホントにキレイな顔をしている。
そして、そっとささやく。
「欲しいな……」
欲しい……もしかして私のお弁当? お腹減ってるのかな……。
「そんなたいしたものじゃ……卵焼き失敗してますし……」
「ちげーって、そっちじゃなくて……まあいいや。座っていい?」
私がこくりとうなずくと、天音くんは隣に腰を下ろした。あぐらをかいて頬杖をつき、笑顔をこちらに向けてくる。
「自分で作ってんの? ベントー」
「う、うん、下手っぴですけど……」
「すげーじゃん。悠乃が作ったもんだから絶対うまいんだろうな」
お世辞100%。返答に困る。
「お昼まだなんですか?」
「そういえば食うの忘れてた。すぐに追いかけたから」
なんでそんなに私を……お昼ご飯の方が大事だよ。
「よかったら、どれか食べますか?」
「──!! いいの?」
目ん玉が飛び出るくらいに驚く天音くん。
「じゃあ話題の卵焼きいただこっかな!」
私がおそるおそる弁当箱を差し出すと、天音くんは躊躇なくヒョイっとつまみあげて口に入れた。
「んぐんぐ……。うん、うっま! 失敗じゃねーよこれ、ぜんぜんうまい」
「ホント? よかったです……」
作ったものを家族以外の誰かに食べてもらうのなんて初めての経験で、うまいって微笑んでくれる天音くんの姿を見ると素直に嬉しくなった。
「うう!」
突然、胸をドンドンと手でたたく天音くん。
「んんんん! んんん!」