両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!

間接キス


 天音くんは声にならない声を出し、苦しそうにもがいて目で訴えてくる!


「もしかして詰まった!? こ、これ!」


 私が水筒を手渡すと、天音くんはすぐにぐびぐびとお茶を流し込んだ。


「プハー! 助かった。はぁはぁ」

「よ、よかったぁ……」

「助けられたな、この水筒に」


 そっち!?


「ぷっ」


 私は思わず噴き出した。


「はははっ!」


 すると、天音くんもいっしょに笑った。


 あ、天音くんの笑顔……。笑った顔、初めて見た……。


 それは作り笑いのような不敵な笑みじゃなくて、心の底から笑う顔だった。


「わりぃな。けっこう飲んじゃった」


 水筒を返してもらうと、私はとんでもないことに気が付いた。


 待ってこれ。間接キスだよ!


 男の子と間接キス……。やっちゃった!

 思わず天音くんの唇に目が行く。しかし、同時にこうも思った。


 イヤイヤイヤ! 昨日ホンモノのキスしたんだよ! よく考えたらさ。


「でもあれは夢ってことにしないとやっぱり──」

「どしたの、一人でブツブツ言って」

「あー! なんでもない! です……」

 思考がぐちゃぐちゃになって気が付いたら声に出していた。


「でもさ、卵焼きマジで美味かった。悠乃の作ったもん食ったらますます好きになった」


 ニッコニコで私の顔をのぞきこんでくる天音くん。キョドるしかない私。


「え、えぇ……?」


 なんだろう、やっぱりからかわれてるよね……?


「卵焼きお好きなんですね……」

「てかさ、敬語やめない? 俺ら同いだし」

「すみません、なんか、つい……」

「また敬語! かしこまらなくていーからさ。もっと距離縮めたいじゃん」


 私と? なんでそんなにグイグイくるの……。

 わかった! これってアレかな? 罰ゲームとかなのかな。


「男の子と喋るの……慣れてなくて、少しずつでいいですか? あ、いい?」

「いーよいーよ。男と喋るの慣れてないんだ? じゃあさ、俺と慣れてこ?」


 とびっきりの笑顔を見せる天音くん。心がはねる。

 こんなカッコいい男の子じゃ、いつまでたっても慣れそうにない。

 だいたい、男の子とこんな風にやり取りするのが初めてで、全然わからない。


 こんなことならもっと早く、近所のターくんで話す練習しとけばよかったよ……


 でも、天音くんは、イヤじゃない──。


「悠乃、お願いあんだけど」


 突然、声色を変えて真剣な目で見つめてくる天音くん。

 どうしたんだろ、かしこまって……。お願いってなんだろう?


「俺らまだ会ったばかりで早いかもだけど……」


 え、待って待って、だめだよそんなの!
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