両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!
奏空のお願い
今日はよくお願いされる日だなぁ。
「おれのこと、奏空って下の名前で呼んでくれないかな?」
ん、聞き間違いかな?
私はとっさに訊き返した。
「えと、なんて言ったの?」
「だから……下の名前で呼んでほしいんだ、おれも」
おれも……?
「それは……どうしたのいきなり」
「天音のこと下の名前で呼ぶんなら、おれも奏空って呼んだ方が、自然だよね?」
目が泳いでいて、なんだか奏空くんらしくない。いつものクールな感じはなくてなんだか焦ってるような。
「そ、そうかな。うん、わかった。奏空……くん……」
「ありがと! じゃあお返しに、おれも悠乃ちゃんって呼んでもいいかな?」
ええ! 恥ずかしい……。
天音くんに続いて奏空くんにまで名前を呼ばれるなんて、いったいここ数日で何が起こったんだろう……。
でも、奏空くんは天音くんと違って強引じゃない。ちゃんと確認をとってくれる。
「い、いいよ……。天音くんも私のことなぜか名前で呼んでくるし……」
天音くんの名前を聞くと、奏空くんは表情をこわばらせた。
「あー、悠乃ちゃん、ところでさ。生徒会って興味ない?」
生徒会……。
「実は新年度が始まったんだけど、メンバーが足りてなくて探してるんだ。悠乃ちゃんに是非入ってほしくて」
「そうなんだ。え、どうして私?」
「悠乃ちゃんは先生からの信頼も厚いし、みんなの代表としての資格もあると思うから誘ってみたんだ」
目立つことが嫌いな私は生徒会に入ることなんて考えたことがない。だけど、奏空くんに直接誘われたとなると、なんだか無下にもできない。
私が返答に困ってることを察したのか、奏空くんは表情を柔らげて丁寧に話し出した。
「そんなに難しく考えないで、週に二回ほどみんなで集まって話すだけだから、用事があったら欠席してもかまわないし」
そこまでしゃべると奏空くんは、人差し指を口元にあて、声のトーンを落とす。
「これは内緒だけど……月に二、三回はお茶会という名目でケーキを食べたりもしてるんだよ」
甘いものに目がない私にとっては、それはなかなかの誘惑だった。
「とりあえず、今週中に一度顔出してみない?」
「う、うん。じゃあ顔出すだけなら……」
「じゃあさ、連絡先、教えてもらってもいいかな?」
え、えええぇ……!
そんな……一日に二度も男の子に連絡先を聞かれるなんて、しかも相手は双子だよ? こんなことって……。
私はあたふたとスマホを取り出す。
断る理由はないんだけどさ……。
こうして、一日で諏訪野兄弟と連絡先を交換するというキセキが起きてしまった。
家に帰った後、ベッドに横になって今日の出来事を振り返っていた。
スマホの中にはなぜか天音くんと奏空くん、二人の連絡先が入ってる。本当に信じられなかった。