両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!
奪い合い
放課後。チャイムが鳴ると同時に天音くんが席を立った。うーんと両手を広げ、背伸びをしている。
私は忘れ物がないか、机の引き出しを確認した。
「悠乃、帰ろうぜ」
そう言って天音くんは私の左手をガシっとつかんできた。
「え! ええー!」
ぐいっと私の体を引き寄せる天音くん。私は自然と立ち上がらざるを得なかった。
「いっしょに!? ま、待って!」
「あたり前だろ。悠乃といっしょに帰りたい」
ざわつく教室。何人かの生徒がこちらに目を向けている。
するとその時、もう一方の手を奏空くんがそっとつかんできた。
「天音、悪いけど悠乃ちゃんはおれと約束があるんだ」
「は? 約束ってなんだよ」
「生徒会を見学してもらうことになってね。今から会議だから悠乃ちゃんは渡せない」
奏空くんは私の右手をつかんだままきっぱりと言った。
私は何がなんだかわからず戸惑うばかり。
なんでこんなことになるの……!
みんな見てるよ。どうしよう……。
天音くんが私の目を見て訊いてくる。
「悠乃は生徒会とか興味あんの?」
「いや、べ、別に……」
「ほらね、奏空。興味ないってさ。ムリに誘ってんじゃねーよ。カラオケでもいこーよ、悠乃」
「天音! お前悠乃ちゃんのことなんにもわかってないんだな。悠乃ちゃんはにぎやかなところや目立つことは苦手なんだよ」
え、奏空くん??
どうして私のことそんなに知ってるんだろう。私は内面のことを誰かに話すことはあまりないのに。
「だったら生徒会なんて誘うなよ。奏空といっしょにいたらイヤでも目立っちゃうじゃん」
「そっちこそ! 天音とカラオケなんか言ったら目立ちまくりじゃないか」
天音くんと奏空くんは、お互い一歩も引きさがらずににらみ合っていた。
しばらくして天音くんが「はぁ」っとため息をついた。
「まあいいや。約束してたならしょうがない。先越されちまったか。今日のところは奏空に譲るぜ」
天音くんはそう言うと左手を離して解放してくれた。
私はホッとして胸をなでおろすも、突然起こった騒動に心臓はバクバクしたまんまだ。
はあ……。ひやひやしたぁ……。