両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!

水筒


 なにそれ……。なんで!?


 私はこみ上げてくる嬉しさを押さえながら、自分の席へと向かう。

 そして、冷静なフリをして返す。


「……どうして私がくるってわかったの?」


 天音くんは指差した。


「また忘れてるじゃん、水筒」


 机の引き出しの中から水筒の頭が少し顔を出していた。


「うん……忘れっぽいんだよね」

「かわいーよなそういうところ」

「──!! またそうやってからかう……」


 なにげなく天音くんの机の上を見ると、プリントらしきものが置いてあった。


「なにか課題やってたの?」

「ああ、たまにガッコー来ると、なんか山のように出されんだよね」

「そうなんだ。案外ちゃんとやるんだね」

「なんだよ。奏空と違って不真面目そうに見えてる? まあ、それは合ってるけどさ」


 天音くんは少し顔を赤らめて目をそらした。彼の意外な一面を見た気がする。

 チラッと中身を見るとけっこう難しい内容だった。一年生の復習ではなく二年生になって最近やったところだ。


「すごいね。ちゃんとできるんだ」

「これくらいはやってやるかって思ってさ」

「いや、そうじゃなくて最近習ったところの応用問題なのに、解けてるのすごいなって」

「あー、そう? 実は家で勉強したりしてっからな……」


 意外だった。


「あれ? 天音くんって勉強するんだね。芸能活動で忙しいんじゃないの?」

「忙しいよ? でもそれ言い訳にしてたらダサいだろ。出席足りなくてもテストで点とってれば卒業できるからさ。だから空いた時間でやってんの」

「すごい! 見直したよ」

「ホント? じゃあなんかご褒美ちょーだい!」

「またそうやってふざける……」

「はは、そういう悠乃も頑張ってるよな。いつも学年二位だろ、すげーじゃん」


 一位になると目だってしまうから二位でも全然いいと思っている。


「一位の奏空くんには及ばないから」

「奏空のやつなー、あれは勉強の虫だから。でも悠乃のこと意識してずっと頑張ってるよ」


 奏空くんが、私を意識……? え……?
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