両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!

天音のライブ


「みんな、今日は来てくれてありがとう! 会えて嬉しかったよ」


 会場に向かって思いを伝える天音くん。ステージ上の彼は学校で見るときと違ってさわやかな笑顔だった。


 天音くん、あんな顔もできるんだ……。


 比べちゃダメだけど、ステージに立っている天音くんは奏空くんと似てる。天音くんは学校で無愛想なぶん、アイドルとして愛想をふりまいてるんだろう。

 ライブ会場は大いに沸いた。全てが初めての体験に私はドキドキだった。会場のすみっこにずっと一人でいたけど、十分すぎるほど楽しめた。



 ライブが終わり、しばらくしてスマホが鳴った。

【話したいことがあるから裏口で待ってて】

 天音くんからのメッセージ。


 なになに……。何があるんだろう……?


 文字を打つ指先がふるえる。

【わかった。待ってるね】



 会場の裏口はファンの子たちでいっぱいだった。


 すごい人……。みんな天音くんのファンなのかな。これじゃ出てこられないんじゃないかなあ……。


 ドン!


「ちょっと、邪魔なんだけど!」


 急に体を押されて転びそうになった。


「わっ、ご、ごめんなさい……」


 振り返ると気の強そうな女の子がこちらをにらみつけていた。彼女はTシャツに帽子、うちわなど天音くんグッズで身を固めている。


「なにコイツ」


 彼女は私のことを値踏みするようにジロジロ見てくる。


「新参のくせに出待ちしてんな。さっさと帰れよ」


 私はすごまれて怖くなり、人混みから離れた。

 ガチのファンたちは殺気立っている。今にも暴動が起きそうな気配だ。

 その時、急に誰かに腕をつかまれグイっと引っ張られた。
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