両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!

ハグ


 私は、自分でも気づかないうちに口に出していた。


「ごめん、奏空くん……天音くんと行くね」


 そっと手を離し、引き下がる奏空くん。そのまま私は天音くんと店を出た。



「ごめんな、悠乃。はぐれちまって、不安にさせちまったよな」


 いつもはぶっきらぼうで怖いのに、こういう時に優しいのはずるい。


 しばらく無言で歩いた。


「天音くん、どこ行くの」

「どこか、静かなところ」

「時間は大丈夫なの」

「今日はずっと空けてあるから」

「どうして私なの、天音くんにはファンがいっぱいいるのに」

「俺は悠乃じゃなきゃイヤなんだ」

「天音くん……」


 人気(ひとけ)のない裏路地へ入ると、急にハグしてくる天音くん。


「よかった。会えて」


 突然の言葉に体が固まってしまう。でも、恐怖はない。

 いつのまにか天音くんが怖いって感情は無くなっていた。

 さっき、奏空くんといた時も心のどこかで天音くんのことをずっと……。

 背中に腕を回して、全てを包み込んでくる天音くん。

 待って、これ私の胸……天音くんに押し付けてるよね。


「天音……くん。どうしたの」

「一人にさせちまったこと、申し訳なくて。なんか会ったら無性に抱きしめたくなった」


 ぎゅうっと、両腕に力を込める天音くん。


「どこにも行くなよ、俺だけのものに──」

「ま、って。苦しい……よ」


 私が声を絞り出すと、天音くんはそっと解放してくれた。


「わり、痛かった?」

「んーん、痛くはない。もう大丈夫」

「じゃ、もっかいギュッてしていー?」

「ちょ、ちょっと待って、今日はもうダメ」

「今日は? じゃあ明日は?」

「あ、あああ明日もダメ! そんなキスとかハグとか簡単にしちゃダメ! もっと順番に──」


 私は自分で言っておきながら、単語を連発したことに顔を赤らめてしまった。


「天音くんも奏空くんもなに考えてるのかよくわからないよ……」


 そこまで言ってハッとした。奏空くんの話は今関係ないのに──。天音くんは目を見開いている。


「奏空と……なんかあったのか」


 しばらく黙ってから、急に声色を変えて話す天音くん。


「奏空とのことは何も聞かねえ。でも、俺の話を聞いてほしい」


 なんだろう……?


「俺さ、悠乃がいるから続けられたんだよ。学校も、アイドルも」

「私が?」


 そして、ポツリポツリと話し始める天音くん。
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