両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!
初対面
あーあ……水筒忘れた……。
放課後、忘れ物に気づいて教室に取りに戻った。校内はガランとしており、なんだかさみしい気持ちになる。
でも、誰もいない学校もなんかいいなぁ……。
夕焼けが差し込む廊下はとても美しかった。
教卓側の入り口から教室へ入ると、すぐに一人の男子生徒がいることに気が付いた。彼は教室の後ろの方に座っていた。遠目だけどオーラを放つくらいイケメンだからすぐにわかった。
うわ、奏空くんいたんだ! 不意打ちだよ。
私はあたふたしながらも自分の席へと歩いていく。彼に近づくにつれ、とりあえず何か言わないとって思った。するとあることに気が付いた。
「あれ、諏訪野くんの席そっちじゃないよ?」
奏空くんの席は私の右隣。だけど彼は今左隣の席に座っていた。そしてずっと黙ったまま、私のことを不思議そうに見ている。
えっ? なんか雰囲気違くない? あれっ?
彼はゆっくりと口を開いた。
「ああ、奏空じゃないよ。俺は天音」
その言葉を聞いた瞬間、思わず息をのんだ。もしかして諏訪野天音くん!
うわー! 初めて見たよ……。奏空くんにそっくりだ……。
なんだか脳がバグりそうだった。
初めて見る天音くんの顔は、奏空くんの顔とほぼ同じだけど少し違っているところもあった。
目つきが鋭くて、口も固く結んでおり、奏空くんのようなさわやかな笑顔はない。あと、髪の毛の先を少し遊ばせている。
でもカッコいいところは似てるなあ……やっぱり双子なんだ……。
奏空くんよりもちょっと怖い印象だけど、ウワサに聞いてるほどではない。教室の中に二人きりだというのに妙な安心感があった。
天音くんは黙ったままなので、私は自然と口を開いた。
「どうしたんですか?」
なんだか怖いので、自然と敬語になってしまった。
「今日、学校休んでましたよね……」
というよりも、彼は新学期が始まってから一度も登校していない。
彼は少し口ごもってから答えた。
「席替えあったって奏空に聞いたから、ちょっと来てみた」
ん? どういうことだろう……? とりあえず授業はとっくに終わってる。
「えと、残念でしたね。お兄さんもみんなも帰っちゃったみたいですけど……」
席替えがあったって聞いてわざわざくるなんて、席が奏空くんと近くになったのが嬉しいのかな。
でも私をはさんじゃってるからジャマだよね……。
「いや、よかった。会えたから」
え、会えた? 誰に……。奏空くんに会えたのかな……?
私が考えていると、彼がだんだんと近づいてきた。
うそ、え……なに……?
思わず後ずさったが机が邪魔でそれ以上後ろへさがれなかった。
戸惑う私にかまわず、吐息がかかるくらいの距離まで詰めてくる天音くん。