両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!

ファーストキス


「成田悠乃、会いたかった」


 どうして……。私の名前を……?


 そう思った時、目の前には天音くんの整った顔が迫っていた。


 待って──。


 そして私の顎を右手でスッと引き、唇を奪ってくる。


「んんっ」


 思わず叫びたいくらいの衝撃。しかし、口をふさがれてるので言葉にならない。


 濃密で甘い……。これが私のファーストキス……?


 目の前の天音くんの強い眼差しに意識の全てを持っていかれる。

 彼は顔を離しながら、あざやかで発色のよい唇を(あや)しく動かした。


「その表情(かお)……さいこー……」


 とろけるような甘い声でささやいてくる天音くん。


 この数秒、たった数秒に何があったんだろう。

 こんなことって……こんなことしちゃってどうするの私!?


 意識が戻ってきて冷静になると、ようやく私の頭は動き出した。


「す、諏訪野くん! な、ど、どうして!?」


 世界中に叫ぶつもりで発した声は、思ったよりもかなり小さかった。そんな私の動揺なんて意に介さないといった感じで彼は微笑(ほほえ)む。


「わりぃ、かわいくてつい」


 かわいい……待って、私が? そんなこと誰にも言われたことないのに……。


 夕日を背にした天音くんの顔はどこか(はかな)げにも見える。

 その時、彼はハッとして時計を見た。


「あっ、この後撮影あるから帰るわ……。じゃ、今日は会えてよかったぜ。明日から楽しみだな」


 な、何が楽しみなんだろう……? てかなんで私、初めて会った相手とキスしちゃったの!?


「ああそれから、俺のことは天音って呼んで、わかった? 悠乃」


 天音くん……なんて恥ずかしくて呼べないよ……。てか私の名前どうして知ってるの!?


「ど、どど、どうして……す、すわ……あ、あま……ねくん……」


 私がもごもごしていると、彼はスタスタと教室の出口へ歩いていった。そして、去り際にふり返ってこちらを見てきた。


「じゃあな。悠乃! また明日!」


 彼はそう言って行ってしまった。


 教室に一人残された私……。


 とても長い時間呆然としていた気がする。窓辺から差し込む夕焼けが私の心をオレンジに染め上げていた。
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