両隣を真面目×不良な双子にはさまれた私は運命をうらんでます!
いらずらな笑み
「はぁ……」
朝の教室は騒がしい。私は自分の席で一人、頬杖をついていた。
……あれって夢だったんだよね。
昨日のことを考えていると、教室内が一瞬ざわついた気がして……なんだろうって思ったら、後ろからふいに左肩をたたかれた。
「おはよー! 成田悠乃」
──!!
振り返るとそこには……やっぱり天音くんだった。どうしてわかるかって、だって右隣には奏空くんがいるんだもん。
「お、おはよう……。 ぁ、天音くん」
私もとっさにあいさつを返す。か細い声になってしまったのでほとんど聞こえてないと思う。
にしても、いきなり名前呼び捨てで挨拶してくるなんて……! まわりの視線が一瞬私たちに集まったのがなんとなくわかる。
体温が上がり、顔がだんだん熱くなる。
右隣を見ると、奏空くんもこちらを見ていた。いつものさわやかな笑顔は消えている。
その視線は、天音くんじゃなくて、私に向けられてる……? どうして……?
奏空くんの顔は天音くんとそっくりだけど、なんとなく区別はつく。奏空くんのほうが表情はやわらかい。でも今の奏空くんの表情は限りなく真顔に近くて不安を感じるものだった。
でも次の瞬間には笑って、みんなと会話している奏空くん。違和感はすぐに消えた。
「天音、久しぶり!」
「なあなあ、バスケ部入らね?」
左隣を見ると、初登校した天音くんの周りに数人の男子生徒が集まっていた。
「部活はやらね、忙しいから」
低く冷たい声で答える天音くん。さらに、芸能活動のことも聞かれていた。
「あー……ギョーカイのことは話せねえから」
ぶっきらぼうにそう答えるだけ。
天音くんの塩対応に心をくじかれたのか、元クラスメイトっぽい男子たちも離れていった。
天音くんのそっけない態度に比べて、みんなと明るく接する奏空くん。二人は対照的だった。
天音くん、ほんとに学校来たんだ。てか昨日のことって現実なのかな。
私は親指でそっと唇をなでる。
その時、天音くんがこちらを見てることに気づいた。なんか口を動かしている。
口の形が「かわいい」と言った気がして、そんな気がして……。
そこで先生が教室に入ってきたので、思考がストップしてしまった。