元カノ〜俺と彼女の最後の三ヶ月〜

「勘弁してくださいよ、町田(まちだ)さん。俺にだって、選ぶ権利くらいありますよ」

町田さんは、青果部の主任だ。

俺が所属しているグロサリー部の主任である黒川(くろかわ)より、よっぽど話の分かる人で、俺はそれを時たま恨めしく思う。

「うーん?
でも、ほら、レジ部の仲村(なかむら)ちゃん? 彼女ともラブラブなわけだし。
年嵩(としかさ)のお姉さん方(パートのおばちゃん達のことだ)にも、ラブコールおくられてるしさー」

四十前だというのに町田さんの頭は、すっかり『波平さん』状態だ。

店内の照明を受けたその頭を見下ろし、俺はへらへら笑った。

「それなんスけどねー」

「────桜井くん」
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