隣人同士の恋事情
『あっ!』
ドキン!
ふいに聞こえた女の子の叫び声。
目の前の視界がゆがむ。
『ほら、いくぜ』
『待って!早いって…あっ…!』
あたしの頬に涙が伝う。
いやだ…っ。
もう……聞きたくない!!
あたしは部屋の鍵を持って、飛び出した。
バタン!ドアを閉め、鍵をかける。しかし、思うように鍵が穴に入らない。
どうして…!?
こういう時に限って…!
閉まってよ、お願い!
この場にいたくない…っ。
涙は溢れて止まらない。
足元には、小さな水溜り。
その時、ガチャリと隣のドアの開く音……。
手の振るえが、一層早くなる。
「那美、出かけんの?」
もちろん……蓮だ。