【完結】きみを守るために、演じ切ってみせよう。

きみを守るために、演じ切ってみせよう。 2話

 リンジーの冷たい声がパーティー会場内に響き渡る。

 シャーロットは肩を震わせ、耐えきれないとばかりに会場をあとにした。

 彼女が会場に到着してから、十分も経っていない。

 会場から姿を消すシャーロットの姿を、リンジーはただ見つめていた。

「――さて、頭の固い公爵令嬢は会場を去った! 今宵(こよい)は時間を忘れて楽しもうではないか!」

 シャーロットが完全に姿を消したのを確認してから、リンジーはそう叫ぶ。

 パーティー会場に集まった貴族たちは、シャーロットのことな気にせずに、むしろ一種のパフォーマンスを見たかのように盛り上がった。

 それを冷めた目で眺めながらも、リンジーは最後までその場に留まる。

 そして、パーティーが終わり、別室にいるローズマリーのもとへ向かう。

 扉をノックすると、ローズマリーが「はい」と返事をした。

「失礼するよ、ローズマリー」
「どうぞ、リンジー殿下」

 部屋の中に入ると、ローズマリーがリンジーを見上げた。痛ましそうに表情を歪め、口を開く。

「本当によろしいのですか、殿下」
「ああ。……きみも、すぐにこの国から逃げるべきだ。――ご苦労だった、ローズマリー」

 金貨の入った袋を手渡す。彼女は金貨を受け取り、頭を下げた。

「殿下のお心遣いに感謝いたします。これだけの金貨があれば、家族ともども、逃亡することができます」

 領地を持っていない男爵家。それがローズマリーの生家だ。
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