旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
プロローグ
大きな窓から差し込む陽光が、薔薇色の絨毯を明るく照らす。窓が少しだけ開けられており、室内に流れ込んでくる風が心地よい。
パサリパサリと紙をさばく音が響くなか、「あ」と声をあげたのは、マルガレットである。彼女がこのような声をあげるのは、珍しい。
「マルガレットさま、どうかされましたか?」
オレリアも自然とそう尋ねていた。
「この手紙は、オレリア宛てよ? しかも兄さんから」
「えっ?」
マルガレットの兄アーネストは、オレリアの夫でもある。だからマルガレットはオレリアの義妹になるのだが、年は彼女のほうが一回りも上であった。
そのアーネストは、オレリアたちが暮らしている首都サランから、馬車で五日ほどの距離にある国境の街ガイロにいる。
二人の結婚式を挙げた次の日、彼はオレリアを首都において、ガイロの町へと向かった。
「アーネストさまから?」
オレリアは信じられないとでも言うかのように、首を左右に振る。
結婚後、離れて暮らすようになってから、彼より手紙が届いたのはこれが初めてである。彼女は毎月のように手紙を書いていたのに、今まで一度も返事はこなかった。
誕生日がこようと、結婚記念日がこようと、贈り物すら届かなかった。
だからといってオレリアは何かの贈り物が欲しいわけではない。ただアーネストが元気であれば、それでいい。
遠い場所にいるのだから仕方ない。仕事も慌ただしいのだろう。
パサリパサリと紙をさばく音が響くなか、「あ」と声をあげたのは、マルガレットである。彼女がこのような声をあげるのは、珍しい。
「マルガレットさま、どうかされましたか?」
オレリアも自然とそう尋ねていた。
「この手紙は、オレリア宛てよ? しかも兄さんから」
「えっ?」
マルガレットの兄アーネストは、オレリアの夫でもある。だからマルガレットはオレリアの義妹になるのだが、年は彼女のほうが一回りも上であった。
そのアーネストは、オレリアたちが暮らしている首都サランから、馬車で五日ほどの距離にある国境の街ガイロにいる。
二人の結婚式を挙げた次の日、彼はオレリアを首都において、ガイロの町へと向かった。
「アーネストさまから?」
オレリアは信じられないとでも言うかのように、首を左右に振る。
結婚後、離れて暮らすようになってから、彼より手紙が届いたのはこれが初めてである。彼女は毎月のように手紙を書いていたのに、今まで一度も返事はこなかった。
誕生日がこようと、結婚記念日がこようと、贈り物すら届かなかった。
だからといってオレリアは何かの贈り物が欲しいわけではない。ただアーネストが元気であれば、それでいい。
遠い場所にいるのだから仕方ない。仕事も慌ただしいのだろう。
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