旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 けれどもオレリアの身体には力が入らなかった。先ほどの恐怖心が心のどこかにあって、一人で歩くのもままならない。
 ふわりと身体が浮いたと思えば、その身体はアーネストによって抱きかかえられていた。これはあのときと同じ。結婚式の食事会を終え、部屋に戻ろうとしたあのとき。
 懐かしい思いに、胸が熱くなる。
 会いたかった、話したかった。そして、触れたかった。
 オレリアも彼の身体に腕を回して、力強く抱きしめた。
 家に着き、彼の腕から解放されたとき、離れたくないと思った。おもわず上着の裾を掴み、本音をこぼした。それは、オレリアとしての気持ち。
 とにかく、一人になるのが怖かった。
 月明かりの下、彼の鉄紺の瞳を見上げると、自然と涙がこぼれてきた。
 もう、気持ちがおさえられない。
 アーネストにきつく抱きしめられたまま、家の中に入る。
 あの男たちに触られたときは不快感しかなかった。
 アーネストは違う。
 もっと触れてほしい、もっと熱を感じたい、そして――
「抱いてください」
 それは紛れもなくオレリアの心からの気持ちである。あんな見知らぬ男に奪われるのであれば、アーネストに抱かれたい。
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