旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「アーネストさま、忘れ物です」
 彼女が机の上に置いたもの――それはアーネストがリリーの家でなくしたと思っていた勲章。
「なっ……」
 アーネストはおもわず席を立つ。
「なぜ、お前がこれを持っている……」
「アーネストさま。お気づきになりませんか?」
 いや、まさか。そんなことは……。
 ぐわんぐわんと頭の中が音を立て、今までの記憶を呼び起こす。
「ごゆっくりどうぞ」
 その声色は、アーネストがいつも食堂でリリーからかけてもらったものだ。
 すべてがやっと繋がった。
 彼女を初めて見たときの既視感。彼女を抱いたときに感じたオレリアの姿。
「り、リリーか?」
「はい。アーネストさま!」
「うぉおおおおおおお」
 アーネストは、腹の底から低い声を響かせ、年甲斐もなく吠えた。
< 113 / 186 >

この作品をシェア

pagetop