旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十七話
 オレリアが目を覚ましたときにはすでにアーネストの姿はなく、置き手紙が一枚あっただけ。
 彼からもらった二通目の手紙。いや、一通目は離縁の申し出であったため、あれは手紙に数えない。つまり、これはアーネストから届いた初めての手紙である。
 内容はオレリアではなく、リリーの身体を気遣うものと、あまり遅い時間まで食堂で働かないようにと、そういった文面であった。当たり障りのない文章であっても、アーネストの気持ちが伝わってきて、その手紙を抱きかかえてうふふと笑った。
 あの後、体液で汚れた身体をきれいにして、二人は抱き合って眠った。あれほど怖い思いをしたのに、アーネストの体温に包まれるとすんなりと眠りに落ちた。
 そして目が覚めると、彼の姿はなかった。
 夢だったのでは、と思ったけれども、彼が書き残した手紙が昨夜の出来事が現実であると突きつけた。
 喜び舞い上がっている場合ではない。アーネストはオレリアと本気で別れるつもりである。
 それを何がなんでも阻止しなければならない。
 もともとあの食堂で働くのは、一か月が限度だとダスティンが言っていた。長くなればなるほど、リリーがオレリアであると気づかれる可能性がある、と。それはアーネストだけでなく他の者にも。ダスティンが危惧していたのは、他の者に気づかれることだった。だから期限は一か月。
 その一か月もあと少しという昨日、仕事の帰りに変な男につきまとわれた。アーネストがいなかったら、どうなっていたかわからない。思い出しただけでも、背筋がゾクリとする。
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