旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 寝台から降りるとズキリと下腹部が痛んだが、その寝台の下に何かが落ちているのに気づき、それを手にする。
 勲章であった。
 アーネストが上着を乱暴に脱ぎ捨てたときに、その衝撃で落ちたのだろう。
 まずは食堂へと足を向けて、今後についてエミに相談する。もともと一か月の約束であったから、その期間内は食堂での仕事をしっかりこなしたいことを伝えた。それから、昨夜、いつも食堂に来る男に追いかけられた内容を口にしたところ、エミはオレリアを夜の担当から外した。仕事の内容も給仕から外して、料理や盛り付け、洗い物など、裏方の仕事に割り振った。
 だからあれ以降、オレリアはアーネストに会っていない。表に立っていないのだから、仕方のないこと。
 そしてきっちりと約束の期間、食堂の仕事をやり終えてから、アーネストに突撃すると決めた。
 オレリアはガイロの街に来てからというもの、マルガレットやシャトランと手紙のやりとりをして、アーネストの姿を確認できたことは報告しいていた。
 マルガレットの返事は過激で「押し倒せ」とも書いてあったが、あれを押し倒したかと問われると微妙なところである。
 とにかくアーネストの気持ちはよくわからないけれど、オレリア自身の気持ちは彼に伝えるつもりだった。
 伝えなければ絶対に後悔する。嫌われていたとしても、自分の気持ちだけは――
 黒く染めていた髪を元に戻し、明るいドレスを着てアーネストの執務室へと突撃した。
 そして、リリーとオレリアが同一人物であると伝えたのだが、アーネストは項垂れて今、隣に座っている。
「あの……アーネストさま?」
 先ほどからアーネストはうんうんと唸って、オレリアを見ようとしない。
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