旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十八話
 オレリアの真っ直ぐな視線にアーネストは射貫かれた。
 沈黙が生まれるたびに外から聞こえてくるのは訓練兵の号令で、この場所がガイロの軍事施設であると強く意識させられる。
 そんななか、隣にいる無邪気な生き物はアーネストの気持ちを刺激し、今までの決意のすべてを覆してきたのだ。
 オレリアに離縁する気がないのなら、これ以上の説得を試みても無駄だろう。
 そもそもここまでやってくるような行動力の持ち主なのだ。目を離したら、何をしでかすかもわからない。だったら、側において監視しつつ、守ったほうがいいのではないだろうか。
 突き離そうとしても離れない場合、ということを想定していなかった。
 十二年間もかけて、嫌われようとしていたのに、その作戦は失敗に終わった。
 それによって今後どうしたらいいかを考えているのだが。
 やはり、彼女と夫婦関係を続けるしかないだろう。むしろ、アーネストも心のどこかではそれを望んでいた。
 守れないから突き放す。だけど、失いたくない。理性と気持ちがぐちゃぐちゃに絡みあっている。
 そして、一目その姿を目にしたときから、手放したくないとさえ思っている。
 だから、会いたくなかったのだ。彼女と会うことで、自分の心境に変化が出るのが怖かった。アーネストの立場上、彼女を危険に晒してしまうことも。
 ここまできて突き放すこともできない。突き放せないなら、側において守るだけ。
 そう心を決めると、すっと気持ちが軽くなった。
「……わかった」
 低く唸るようにして同意した。すると彼女は、ぱっと花を咲かせたような笑顔になる。
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