旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 彼女は相変わらず細くて、軽い。それでも自分とは異なるやわらかさが女性であると意識させるのだ。
「あ、陛下からのお手紙を預かってきたのです」
 わざわざオレリアに渡すところが、ダスティンのあざといところだろう。いつものように伝令なりなんなりを使えばいいものを。
 もう少し彼女の体温を感じていたいところだったが、渋々と熱を解放した。
 オレリアは小さな鞄から手紙を取り出し、アーネストへと手渡す。
「お前は、この手紙の内容を知っているのか?」
「いいえ、陛下からアーネストさま宛ての手紙ですから……安心したら、喉が渇きました」
 彼女の目尻には、少しだけ涙がにじんでいた。だけどそれに気づかぬふりをして、ダスティンからの手紙を開ける。
 隣ではオレリアがお茶を飲みながら、お菓子に手を伸ばす。アーネスト一人ではここまで頭がまわらなかったから、やはりジョアンに感謝すべきところだろうか。
 オレリアの気配を探りつつも、ダスティンからの手紙に視線を走らせる。内容を確認していると「どんな内容ですか」と彼女がのぞき込んできた。
「建国十五周年記念式典の件だ」
 こんな大事な内容をオレリアに託したというのは、オレリアと出席しろと遠回しに言っているのだ。つまり、アーネストがオレリアと会うことから逃げていたら、この手紙は永遠に届かなかった。
 そうなった場合、十五周年記念式典の存在そのものを、アーネストに教える気はなかったということだ。
 いや、ダスティンはそうならないとわかっていたのだろう。
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