旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 しかし、アーネストとしてはまだガイロの街から離れる予定はなかった。それに、ダスティンからの手紙にも、式典には出席しろと書いてあるものの、拠点を移せとは記されていない。
 となれば、オレリアもガイロの街に滞在せねばならないのだが。
「いや、ダスティンに確認する必要がある。俺はまだ、ガイロにいなければならないからな」
「陛下もお義父さまも、アーネストさまのお側にいていいとおっしゃっておりましたよ?」
 その言葉に、引っかかった。いや、さっきから気になっていたのだ。
「お前はまだ、族長を義父と呼んでいるのか?」
 デンスはとっくにオレリアの後見人から外れている。ましてオレリアは娘でもなんでもない。となれば、周囲に合わせて族長と呼ばせるべきではないのだろうか。
「はい。お義父さまが、そう呼ぶようにと」
「族長は、その……俺のことを何か言っていなかったか? お前に離縁を申し出たことで」
「何か、とは?」
「いや、いい。なんでもない」
 族長がオレリアをかわいがっているのは、ダスティンの報告書からも読み取れた。いや、族長だけではない。ダスティンもだ。
 思い返せば、オレリアが幼い花嫁としてトラゴス国から差し出されたときも、ダスティンたちは彼女の味方だった。ただ一人、族長だけがアーネストのことを気にかけていたのだが、その族長がオレリアを気に入ってしまったのだから、アーネストの味方などいるはずがない。
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