旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 二人でのんびりとお茶を飲んだあと、アーネストはダスティンに手紙を書いた。
 建国十五周年の記念式典は、四ヶ月後。今から各国への招待状を準備する必要がある。それに、ハバリー国にとっては、初となる大々的な催しものであるため、気合いの入れ方が違う。
 アーネストも式典の一か月前には、首都サランへと戻るつもりであった。それまではガイロの街をもう少し住みやすくしておきたいものだ。
 オレリアもガイロの街にとどまり、今まで住んでいた居住区三区の家から、軍施設敷地内にある居住区へと移ってきた。
 ここはガイロの街に常駐している兵たちの家族が住まう場所。
 アーネストもここに居を構えているのだが、単身というのもあって執務室内に寝泊まりすることが多かった。
 だから、本来のアーネストの邸宅にオレリアを連れてきたときに、彼女は呆然と中を見回した。
「なんですか! ここ。アーネストさま、ここに住んでいらしたのですか?」
「いや、ここは荷物を取りにくるだけで……寝泊まりはほとんど向こうだ」
「片づけます!」
 ただの荷物置き場となっており、足の踏み場もなかった邸宅を、オレリアがせっせと片づけ始めた。
 トラゴス国の王女であれば、このようなことをしないだろう。すっかりとミルコ族の精神が身についたものだと感心して見ていたら「アーネストさま。何をぼんやりなさっているのですか!」と一喝され、アーネストも片づける羽目になったのだ。
 どうやらオレリアはシャトランに似てきたようだ。
 とりあえずその日は、寝る場所を確保したが、十二年の年季の詰まった荷物置き場を片づけるのは、そんなに容易くない。
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