旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十九話
 食堂の仕事を辞めてしまったオレリアは、昼間は邸宅の片づけに励んでいた。一人で黙々と片づけているのだが、荷物が多くてなかなか終わらない。これがアーネストの十二年間の積み重ねなのかとも思うのだが、どうでもいい荷物も多いような気がしている。
 アーネストがいるうちに、いるもの、いらないものと振り分けてもらい、捨てるもの、売るものと分けるのはオレリアの仕事でもあった。
 そんななか、気晴らしに食事の準備もしており、苦手だった料理をシャトランに教えてもらってよかったと、心から感謝している。
 いつかはアーネストに食べてもらいたいと思い、十二年間励んでいた料理。嫁いだときには、芋の皮むきと芋を蒸かすしかできなかったが、あの食堂では副菜やスープまで担当していた。エミもオレリアの料理の腕前を褒めてくれた。
 いつもであれば食堂へ行っていたアーネストは、三食きっちりとオレリアのところに来て、オレリアが作ったご飯を食べてくれる。それが何よりも嬉しかった。
 ミルコ族は家庭で食事をとることが多いらしいが、スワン族はそうでもない。だから、誰でも利用できる大きな食堂があるという話である。
 同じ国でありながら、それぞれの民族性を生かし、けして圧力をかけないのがダスティンの国政のやり方なのだろう。その分、統一性がない国と言われることも多い。
 ガイロの街に赴任したアーネストは、ミルコ族でありながらもガイロの街の生活を受けいれていた。だけど彼が言うには、ミルコ族の典型的な家庭の風景にどこか憧れがあったらしい。幼い頃からラフォン城で族長家族と一緒に過ごしていたことも原因の一つのようだ。
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