旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二話
トラゴス大国の象徴とも呼べる白亜の王城は、今日も朝日を浴びて神々しく輝いている。その王城から離れた場所に、ぽつんと建つみすぼらしい建物は、庭仕事の物置小屋として使われている場所でもある。
しかし、その小屋の二階。ぎしぎしと音を立てる木製の粗末な寝台で、一人の少女が静かに眠っていた。
夜明けを思わせるような曙色の髪をゆるく三つ編みにし、子どもらしいふくよかな頬にかかる短い髪の毛が、寝息と共にふわふわと揺れ動く。どんな夢を見ているのか、ぷっくりとしている唇はもごもごとしているものの、それは乾燥してひび割れていた。
「おはようございます、オレリア様」
オレリアを起こしにやってきたのは、侍女のメーラだ。彼女はオレリアの乳母だった女性の娘である。
オレリアが三歳のときにオレリアの母親が亡くなり、それを機にこんな質素な小屋においやられてしまったが、そんな彼女の身を案じて一緒についてきてくれたのがメーラなのだ。だからオレリアにとっては唯一といってもいいほどの、心を許せる人物でもあった。
瞼がぴくぴくと動き、海のような碧眼の大きな目がぱっちりと開かれる。
「おはよう、メーラ……うっ」
身体を起こしたところで、オレリアは痛みを堪えるような声をあげた。
「オレリア様?」
「だ、大丈夫。なんでもない」
顔をしかめて答えてみたものの、なんでもないような状態ではないとメーラが察したようだ。
「背中が痛むのですか?」
大丈夫と言いたいのと、気づいてほしいという思いが絡まり合って、何も答えられない。
しかし、その小屋の二階。ぎしぎしと音を立てる木製の粗末な寝台で、一人の少女が静かに眠っていた。
夜明けを思わせるような曙色の髪をゆるく三つ編みにし、子どもらしいふくよかな頬にかかる短い髪の毛が、寝息と共にふわふわと揺れ動く。どんな夢を見ているのか、ぷっくりとしている唇はもごもごとしているものの、それは乾燥してひび割れていた。
「おはようございます、オレリア様」
オレリアを起こしにやってきたのは、侍女のメーラだ。彼女はオレリアの乳母だった女性の娘である。
オレリアが三歳のときにオレリアの母親が亡くなり、それを機にこんな質素な小屋においやられてしまったが、そんな彼女の身を案じて一緒についてきてくれたのがメーラなのだ。だからオレリアにとっては唯一といってもいいほどの、心を許せる人物でもあった。
瞼がぴくぴくと動き、海のような碧眼の大きな目がぱっちりと開かれる。
「おはよう、メーラ……うっ」
身体を起こしたところで、オレリアは痛みを堪えるような声をあげた。
「オレリア様?」
「だ、大丈夫。なんでもない」
顔をしかめて答えてみたものの、なんでもないような状態ではないとメーラが察したようだ。
「背中が痛むのですか?」
大丈夫と言いたいのと、気づいてほしいという思いが絡まり合って、何も答えられない。